「サイズ・甘さ・トッピング」が選べない注文アプリ|メニューが12倍に膨らむ話
QRオーダーのオプション(サイズ・甘さ・温度)が設定できないと、コーヒー1品が12メニューに膨らみます。個人飲食店が契約前に確認すべきポイントを、自分で注文アプリを作った立場から解説します。
QRモバイルオーダーを検討していて、機能一覧に「オプション設定」という項目があるのを見て、これは些細な機能だろうと思って読み飛ばしていませんか。
ここは読み飛ばしてはいけない項目です。オプションを持てないアプリを選ぶと、メニュー登録の作業量が一気に数倍になり、お客様の注文体験も同時に悪くなります。しかもこれは運用の工夫では回避できません。
この記事は、安価なQR注文アプリの使いにくさに行き当たった結果、最終的に自分たちで注文アプリを作ることになった立場から、オプション非対応が現場で具体的に何を引き起こすかを書きます。
そもそも「オプション」とは何を指すのか?
飲食店の注文でいうオプションとは、1つのメニューに紐づく選択肢のことです。
- ドリンクのサイズ(L / M)
- 温度(ホット / アイス)
- 甘さ(無糖 / 微糖 / 加糖)
- トッピング(追加チーズ、大盛り、ソース変更)
- ライスの量、麺の硬さ
紙のメニューなら「アイスコーヒー ¥450(L +¥100)」の一行で済む話です。注文アプリでも、オプションを持てる作りなら「コーヒー」という1メニューに選択肢をぶら下げるだけで終わります。
問題は、この仕組みを持っていないアプリが安価な価格帯にかなりあることです。
コーヒー1品が12メニューになるとは、どういうことか?
オプションを持てないアプリでは、選択肢の組み合わせをすべて別々のメニューとして登録するしかありません。
コーヒー1品に、温度2種・サイズ2種・甘さ3種の選択肢があるとします。組み合わせは 2 × 2 × 3 で12通り。オプションが使えれば登録は1メニューで済みますが、使えなければ12メニューを個別に登録することになります。
これがドリンク1品の話です。ドリンクメニューが10品あれば、それだけで120行。定食やパスタでソース・大盛り・トッピングを扱っている店なら、さらに膨らみます。
メニューが膨らむと、店とお客様に何が起きるのか?
問題は登録作業の面倒くささだけではありません。店側とお客様側の両方で別々の問題が起きます。
お客様側で起きること
スマホの画面に12行の似たような名前が並びます。「アイスコーヒーL微糖」「アイスコーヒーM微糖」「ホットコーヒーL微糖」……。お客様は目当ての品を探すためにスクロールし続けることになります。
紙のメニューなら一覧性があるので12通りあっても目で追えますが、スマホの縦長の画面ではそうはいきません。探すのが面倒になった時点で、注文をやめるか、店員を呼ぶかのどちらかになります。注文アプリを入れた目的が「店員を呼ばずに注文してもらう」ことなら、目的そのものが崩れます。
店側で起きること
一番効いてくるのはメンテナンスの手間です。
コーヒーを50円値上げすると決めたとします。オプション対応なら基本価格を1箇所直して終わりですが、12メニューに分かれていれば12箇所を直します。しかも「Lだけ100円乗せる」といった価格差があるので、単純な一括置換もできません。
季節メニューの入れ替え、原価上昇による改定、期間限定トッピングの追加。飲食店ではこれが日常的に起きます。そのたびに数十箇所を手で直すことになれば、メニュー更新そのものを避けるようになります。これは店の商売の柔軟性を、アプリの都合で削られている状態です。
「メニューを分けて登録すればいい」では、なぜダメなのか?
「面倒でも登録してしまえば済む話では」と思うかもしれません。ここが判断の分かれ目です。
分けて登録する運用には、時間が経つほど壊れやすくなるという性質があります。
12メニューに分かれた状態で、あるサイズだけ価格の直し忘れが出る。新しい甘さの選択肢を足したときに、一部の温度・サイズの組み合わせだけ登録漏れが出る。分岐が多いほど、抜けが起きる箇所も増えます。そして登録漏れや価格の食い違いは、お客様が注文した瞬間か、レジで会計する瞬間に発覚します。
つまりこれは「面倒だけど頑張ればできる」ではなく、「頑張り続けないと壊れる仕組みを、毎日回し続ける」という話です。1週間なら回せますが、1年は回せません。
契約前に、何をどう確認すればいいのか?
機能一覧に「オプション設定」と書いてあっても、どこまでできるかは実装によって差があります。デモや無料期間があるなら、自店で一番選択肢が多いメニューを1品だけ登録してみるのが最短の確認方法です。
確認すべき点を整理します。
| 確認項目 | オプション対応が十分なアプリ | 対応が不十分なアプリで起きること |
|---|---|---|
| 1メニューに選択肢を紐づけられるか | 「コーヒー」に温度・サイズ・甘さを設定できる | 組み合わせの数だけ別メニューを作ることになる |
| 選択肢ごとに追加料金を設定できるか | 「Lサイズ +100円」のように差額で持てる | 組み合わせごとに合計金額を手入力する |
| 選択肢を必須/任意に分けられるか | サイズは必須、トッピングは任意にできる | 選ばせたい項目を選ばせられない、または全部任意 |
| 複数選択を許可できるか | トッピングを2つ以上選べる | 1つしか選べず、注文が備考欄頼みになる |
| 基本価格を1箇所で直せるか | 値上げは1箇所の修正で全組み合わせに反映 | 組み合わせの数だけ手で直す |
| 選択肢の並び順を後から変えられるか | 人気の選択肢を上に動かせる | 追加した順に固定される |
このうち「基本価格を1箇所で直せるか」は特に確認をおすすめします。導入直後は気になりませんが、最初の値上げのタイミングで一気に効いてきます。
なお、オプション以外にも安価なQR注文アプリで詰まりやすい箇所があります。読み込みの安定性や売り切れ表示については、モバイルオーダーを入れても注文が増えないのは、お店のせいじゃないかもにまとめています。
よくある質問
Q. QRオーダーでサイズや甘さを選ばせるには、どうすればいいですか?
A. アプリ側にオプション(選択肢)の機能があるかどうかで決まります。あれば1メニューに選択肢を紐づけて設定します。なければ組み合わせごとに別メニューを作るしかありません。店側の設定の工夫では埋められない差なので、契約前に機能の有無を確認してください。
Q. メニュー数が多いと、お客様は注文しにくくなりますか?
A. スマホの画面では一覧性が低いので、紙のメニューより影響が大きく出ます。似た名前が並ぶと目当ての品を探しづらくなり、店員を呼ぶか注文をやめるかに繋がります。品数そのものより「似た名前が並ぶこと」が効きます。
Q. 今使っているアプリがオプション非対応です。回避策はありますか?
A. 完全な回避策はありません。よく出る組み合わせだけを登録して残りは口頭で受ける、という折衷はできますが、それは注文アプリを入れた意味を部分的に捨てることになります。運用でカバーできる範囲と、アプリの作りに依存する範囲は分けて考えてください。
Q. オプションが多い店ほど、モバイルオーダーは向いていないということですか?
A. 逆です。選択肢が多い店ほど口頭注文での聞き間違いが起きやすいので、本来はモバイルオーダーの効果が大きい業態です。ただしその効果はオプション機能があって初めて出ます。選択肢が多い店ほど、この項目の確認が重要になります。
この記事は宣伝のために書いたものではありません。同じように「オプションが設定できずメニューが膨らんだ」「そのせいでメニュー更新をやめてしまった」という経験のある個人店の方に、当時どういう運用をしていたのかを聞かせてもらいたくて書いています。心当たりがあれば、差し支えない範囲で教えていただけると嬉しいです。